がんと3ヶ月娘と私 ~AYA世代の闘病日記~

2018年8月に腎細胞がんと背骨への転移と診断(ステージⅣ)。とあるAYA世代の会社員の明るく楽しい(⁉)日々の生活を綴っていきます。

葛藤の末に選んだ抗がん剤は「インライタ」

自己紹介はこちらhttps://kurorotomo.hatenablog.com/entry/2019/02/06/222144

2月25日。

車の買い替え(ハリアー→ノア・ヴォクシー)を検討しており、軽い気持ちで昨日ディーラーへ。ハリアーは1年強しか乗ってないからか手出しはほぼ無しという見積りが出てきた。自分も帰りには買う気がグンとアップ。比較車両を見に行ったり、高く買取れる業者を探したりと今週は何かと忙しくなりそうな予感。

今回は先日書いた以下の抗がん剤選択の話の続きを書きたいと思う。

究極の(!?)選択をすることになりそう#2 - がんと3ヶ月娘と私 ~AYA世代の闘病日記~

抗がん剤選択における科学的見解について

抗がん剤の選択のために主治医に渡された資料は、服用する患者さん向けの説明書。確かに服用の注意とか副作用がどうだとかの記述があり参考にはなるが、抗がん剤の選択をするに副作用だけでは決められない。それと腎臓がんの患者さんのブログは自分以外にもたくさんあるが、個人個人が「効いた」「効かなかった」「副作用強い」「副作用無い」とか書かれていてもあくまでも個人の感覚・見解なので参考になり難い。

それよりも自分が素人なりに心配したのは抗がん剤の服用する順番。例えば、Aという抗がん剤を飲んだ後にBという別の抗がん剤を飲むと効果てき面だが、逆の順番で飲むと効きが悪いとか、気にするのはそういう所。その点で科学的なデータに基づいて書かれた書籍を探して見つけたのが「腎癌診療ガイドライン2017年版 日本泌尿器科学会編」(メディカルレビュー社)。これは買わなくてもネットで検索すれば見れるしデータに基づいて記述されているのでオススメ。
自分が気にする抗がん剤の順番について大事なことをまとめると、

  • 二次薬物療法としての分子標的治療について、分子標的薬で抵抗性となった進行癌に対するアキシチニブ(インライタ)を用いた分子標的治療は無増悪生存期間*1の延長が期待でき、推奨される。
  • 進行癌に対するニボルマブ(オプジーボ : 免疫チェックポイント阻害薬*2 )は、血管新生阻害薬*3による治療後の二次治療(以降)として推奨される。

ほぼ原文のままなので難しい表現が多数あるが要するに、

①分子標的薬(自分の場合、ヴォトリエント)の次は「インライタ」が効果的。

②血管新生阻害薬(ヴォトリエント、インライタ)の次は「オプジーボ」が効果的。

しっかりと本にこの結論の元となるエビデンスはあるのである程度は信頼できると考えている。順番に関する記述は以上で、オプジーボの後の治療についての言及は無かった。

抗がん剤を服用する順番と生きがい

会社を休んで一日中ベッドの上にいると「生きがいとは何か」とか「人生の意義とは何か」だとか難しい問いに対して考える時間を与えてくれる。残念ながら答えはいつも見つからない。見つからないと言うか正確に言うと、答えに霧がかかっている感じだろうか。

抗がん剤の選択について前述の調べを終えると以下の2つの選択肢が現れてくる。

①「ヴォトリエント」→「オプジーボ

②「ヴォトリエント」→「インライタ」→「オプジーボ

オプジーボの後に別の抗がん剤を飲めない事もないかもしれないが、主治医によるとオプジーボの後は実績がほとんど無いらしい。オプジーボはわりと新しい薬なのでデータが少ないのだろうか。

オプジーボは奏功率が2割程度しかないが、今までとアプローチが全く異なる免疫チェックポイント阻害薬。どハマりすると効果は絶大と言われている。そして2割のグループに入らなくとも何割かは忘れたがある程度はがんの進行にブレーキをかけてくれるらしい。

一方、インライタの奏功率も2割程度だが、ヴォトリエント(自分が服用した最初の抗がん剤)と同じ血液新生阻害薬。実績を見てもそれほど変わらないイメージ。

気持ちとしてはオプジーボを試して劇的な改善を狙いたい(選択肢①)。小さな娘がいるし妻も子育てで忙しい。やはり、一家を支える立場としては少しでも早く仕事復帰をして安心させたい。そういう気持ちが強く、支配的だった。オプジーボの次の薬に実績が無いと知るまでは。がんと長く付き合っている患者が衝突することがあると言われる問題に、存在する(全ての)抗がん剤にがんが耐性を持ってしまう、つまり使える抗がん剤が無くなるということがある。「オプジーボの次の薬に実績が無い」と「使える抗がん剤が無くなる」とはもちろん同じではないが、感覚としては似ている気がする。そうとなればオプジーボが終わったら本当に終わり???それだから「生きがいとは何か」とか色々難しい事を考えてしまうのです。

葛藤の末の選択

今すぐに劇的な改善を狙う道(選択肢①)を選ぶか、確実に長く生きる道(選択肢②)を選ぶか。仕事で活躍していないと自分は自分でない、とずっと思っていたが、今はその考えを否定できる。自分は家族、両親、友人、会社の方々に支えられ、時には自分が支えながら生きてきた。幼少期の友人を大人になって亡くす経験を何度かしているが、その知らせを受ける度、思い出が霞んでいくような気持ちとともに数日間何とも言えない脱力感・虚無感に襲われ、それが頭の中をサイクルする。仕事も遊びも手につかなかった。人は存在するだけで精神的な面で支えになることは出来るはず。そのように自分の中ではスッと腹落ちした。オプジーボで早く治したい、そういう葛藤はもちろんあったが長く生きる事の方が大事。長く生きていれば新しい抗がん剤が開発されているかもしれないし。

ダラダラと書いたが、結論を言うと次はインライタを服用する事に決めた(選択肢②)。そして今日が記念すべきインライタを服用して1日目。昨年の8月にヴォトリエントの服用を始めた時「私の命をよろしくお願いします」と魂を込めて口に入れた気持ちと同じような感情が湧いた。新しい友達とともに頑張っていきたい。

 

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2019/2/25の治療・検査

・インライタ(抗がん剤) 5mg×2回

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*1:治療中(治療後)にがんが進行せず安定した状態である期間。

*2:がん細胞が免疫から逃れようと体内の免疫(T細胞など)にブレーキをかけるのを阻害する薬。体内にもともとある免疫細胞の活性化を持続することでがん細胞を抑制する。

*3:がん細胞が増殖や成長を続けるためにたくさんの栄養を必要とするので自分専用の血管を作り出す事を血管新生という。血管新生に必要な信号を細胞内に送っているタンパク質ががん細胞の表面にあるが、それを攻撃する事でがん細胞の増殖を抑制する薬。ヴォトリエントインライタがそれにあたる。